平成14年度

第6回

激情と叙情 〜ハ短調が描くファンタジー

大津 純子(ヴァイオリニスト) 岡田 知子(ピアニスト)

28/9/2002

講演動画

本公演の映像公開はございません。

講演概要

ベートーヴェンの作品にはハ短調による傑作が多く−例えば交響曲第5番『運命』、コリオラン序曲、ピアノ協奏曲第3番、ピアノ・ソナタ『悲愴』、最後に作曲されたピアノ・ソナタなど−、このソナタも優れた作曲技法に裏付けされた、その名を辱めない名曲である。また、北欧ノルウェーの国民的感覚を民族的抒情性で歌い上げる作曲家:グリーグによるソナタ(全3曲)の中でも、第3番はハ短調の特性を生かし、円熟した技法を駆使した力強い作品に仕上げられている。"究極の?ハ短調"と言えば、圧倒的人気ヴァイオリン曲『チゴイネルワイゼン』−あのラプソデイックな、哀調に満ちた歌い廻し・・あれもハ短調なのだ。どうも"ハ短調"には、作曲家の想像力を突き動かす魔力が潜んでいるように思えてならない。 通常、我々演奏家は単調化を嫌い、同じ調性の曲を並べたプログラムは組まない。しかし、これらの作品は同じ"ハ短調"で書かれていても全く趣を異にするものであるから、時には「常識」を破り、ハ短調から関連する調性への発展・変化が醸し出す、あざやかな対照の世界:悲愴と明朗、激情と叙情、高潮と鎮静・・・といったファンタジーにトップリと浸ってみるのもユニークな体験かもしれない。(文・大津 純子)

概要・略歴

資料

知と美のハーモニーページ

https://www.nii.ac.jp/about/publication/harmony/#harmony2

NII webページ

https://www.nii.ac.jp/event/karuizawa/2002/